2014年7月19日土曜日

will は意志。未来形にあらず。

最近、なぜか日本語オンリーのアプリなのに(説明文も日本語のみ)海外からのDLが多い(というか日本人がガン無視)。 日本が55%でアルゼンチンが7%、メキシコが6%、トルコが4%ですからね。さらには、ブラジル、コロンビア…完全にW杯しちゃってます。 言語的な見地から分析しても日本語が55%でスペイン語10%、英語が6%ですからね。 この状況はよくない、ということでバイリンガル仕様を目指し、英語への翻訳を熱心に行う今日この頃。 しかし、会話文ってすげえ難しくないっすか? あと、自動翻訳機はバカ。 日本の英語教育が間違っているからこういう苦労が発生するんじゃないかと、逆恨みしてきたので今回は英語教育がテーマです。

This is a pen.
これはペンです。
こんなこと言う奴おらんやろ、くだらない。人間の会話じゃ発生しないことを教えている。だから、ダメだ。 こんな風に批判する考えはよく聞きますし、もっともなんですが、
This is a mushroom.
とでもすれば「これはキノコです」なんだから、まあ一般的な状況としてあり得る感じ? ですよね。 物知りなヒゲオヤジが森の中で謎の植物を指差して「ディスイズアマッシュルーム」。あり得ますね。 文章として本質がアホなわけじゃない。 しかしですね、くだらないんですよ、やっぱり。
This is a pen.
を最初に教えることの弊害、大間違いの核心に気付いたかもしれないですよ、これはびっくり堕。

This is a pen.
主語 + 動詞 の構文ですね。これはペンです。 最初期にこれを教えると「英語ってアルファベットか平仮名・漢字の違いはあるけど、けっこう日本語と似てるかも」と、思ってしまいます。 「わかるかもっ」と中学生に思わせることは、勉強のモチベーションを喚起する意味で重要だと思いますが、 主語 + 現在系の動詞 という形式を最初に教えることは大問題な気がします。 Be動詞はともかくとして、あんまり現在系を使わないハズなんですね、多分。 使うにしたって助動詞でクッションを付けます。

I buy it.
こういう表現はないですよね。
I bought it.
私はそれを買った。なら普通に言いそうですが。 日本語の場合、時制というやつが曖昧なので「あなたそれ買う?」「買うよ」という会話があった場合、「買うよ」は
I will buy it.
「私はそれを買う意志がある」という英語表現と同等になります。なぜなら「買うよ」と言ったとき、買うのはその時点より未来の出来事になるからです。

Do you want to buy it?
I'll buy it.
I will take it.
あなたそれ買う?
買うよ。
これください(→店員に向かって)
-----------------------------
上記の英語をGoogle自動翻訳機で和英の英作文しようと思ったら
あなたはそれを買いたいですか?
私はそれを買う。
私はそれを取るでしょう。
と日本語入力しなければなりません。まあ考えられないっすね、こういう入力を行うなんてことは…。 店員さんに買う意志を示す場合は "I will take it." と言うのが普通らしいです(慣用句みたいなもの)。

ちなみに、「私はそれを買うでしょう。」でGoogle自動翻訳をかけると
I would buy it.
この場合、「おそらく買うだろうけどね(絶対ではないよ)」というニュアンスになります。何にせよ未来の話なんですけどね。 要するに、will を使った方が確実性(信頼度)は高いようですが、どうもネットでかいつまんで見てみると、 「そこは will じゃなくて would 使いなよ、ユー」とネイティブに指摘される海外在住の Japanese が結構いるようです。 まあターミネーターがラストで "I'll be back." ではなく、 "I would be back." だと 「帰ってくるぜ、多分…」という感じで間抜けなことになるんでしょうが。 しかし、日常会話で(未来の行動を)そうそう言い切る必要性はない場合が多いから、アメリカ人たちは would をプッシュしてくるんだと思いますけどね、おそらく。 would は will の過去形っていう考え方だとどうしようもないので、would は「~でしょう」みたいに考えてみませんか? will も would も未来の話に使うわけで…。 ちなみにダグラス・マッカーサーは開戦初期にて日本海軍の攻勢におされ(ミッドウェー海戦で大敗北を喫するまで日本側は負け無しだった)、 フィリピンからの撤退を余儀なくされますが、そのときに
I shall return
という文言を使っています。I shall~ という言い方だと「私は必ず~する(それが神の意志だから)」というニュアンスを持つようです。 多分にキリスト教の影響が見受けられます。 神は未来まで見据えている…?

と、ここまで書いてやはり…。違和感、違和感を感じる。 なんというか欧米人にとって未来とはすなわち「意志の問題」なんですよね。 「意志=行動の結果こそが未来だ」という、東進ハイスクールのCMで使われそうな言葉。前向きなフレーズに、後ろ向きにフリーズさ。 だから、will が絡むと未来のことを言うだけじゃなくて、本人の決意表明という意味合いも同時に生まれてしまう。 一方の日本人は、 「つれづれなるままに、日暮らし、硯(すずり)に向かひて」…ですから意志薄弱ですね。 未来は個人の意志とは無関係であるという、そういう民族のはずです(少なくとも遠い昔に言語形成に関わった人たちの平均的な心理としては)。
「オレは明日、たぶん会社に行くだろう」
まるで他人事みたいですが、朝起きて、何も考えずに身支度をして定刻の列車に乗っていつもの駅で降り、途中で同じコンビニに寄り、いつも通りの時間に会社に着く。 この一連の流れをほとんど無意識で行います。哀しいけどそこに意志はほとんど介入していません、惰性です。 だけど、きっとアメリカ流なら
I will go to the company tomorrow.
とキリッとした顔で言うのでしょう。非常に強い意志をそこには感じます。意志と未来の蜜月関係に圧倒されます。 意志は…未来。未来は…意志。 未来が欲しいのなら、想うことだ、やるんだと! そして、それを確実に実行すれば、もう未来は僕らの手の中。 こんな大事なことに今さら気づくなんて! アメリカ人ならボーやだって気付いていることに、ね。イギリス人ならクソガキだって知り得ていることを、ね。 今さら。 少しばかり情緒的に書いてみましたが、だけど、ここは(will は)押さえておかないときっと英語というものを理解できないと思います。

ただし、will(would)は、主語が I であるか否かによって性質が変化します。 I を主語に取る場合の will は意思表示でもあると考えていいでしょう。
I would like you to ~
上記は「私はアナタに~して欲しい」という意味になりますが、will ではなく would を使っているし丁寧口調の要素があるものの、 しかし、けっこう押しが強いというか半強制(命令)みたいなニュアンスに取られかねません。


I would like you to know my name.
これなんかは「私の名前を知ってもらいたい」→「私の名前を覚えろ」→「オレの名前を言ってみろ!」的に思われたりして。
Would you like to know my name?
これなら「アナタは私の名前を覚えたいですか?」→「私の名前を覚えてくれませんか?」となるので丁寧です。 つまり、話し手(私)の意思を表現するのではなく、相手の意思を確認することによって丁寧な印象を与えるわけです。
Would you mind if I join you?
これなら「あなた様は私が加わることをお嫌にはなりませんか?」→「ご一緒よろしいでしょうか?」となります。 ちなみに Could you ~ は、相手の意思を尊重しない聞き方―むしろ客観的な状況・物理的な観点からのアプローチ―なので 場合によっては半強制であると相手に思われるようです。依頼ではなく要求であると受け取られるかもしれません。

Can you still run? | Would you still run?
「あんたはまだ走れるか?」同じ質問を人間と自動車にしてみます。 人間の場合、脚が痙攣(けいれん)していない限りは…心臓が激しすぎるほどに鼓動を刻んでいない限りは…走れるでしょう。 しかし、より重要なのはまだハートが、ガッツが、メンタルが残っているのかということです。 (走ることに意義があるとして)ほとんどの人間が走るのを途中でやめる理由は、「しんどい」からです。 物理的にはまだ少しばかり走れそうだけど、意思として「走れない」ということです。 オリンピックに出場する陸上競技のメダリストでさえ、こういうことがあるのですから、心が折れたから中止するというのは人として当然のことです。 一方の自動車は、ガソリンが少しだけでも残っているのなら、エンジンが焼けつきそうでも、事故の衝撃で車体が歪んでいようとも 「走れる」と答えます。 機械は意思がありませんから、物理的に可能であれば(Can you still run?)、やっちまいます(Yes, I can.)。 だから、拒否権(意思)を持っている人間様に Can you~? , Could you~? と聞いてしまうのはちょっと強引な気がしますね。 「あなたは自由意思で拒否する権利を持っている、そのうえで聞きましょう。~は可能なのかと?」というのが Will you~? , Would you~? です からね。

話し言葉において will(would) が非常に重要であることがわかります。 話し手(I)の意志を前面に出すのか? 相手(you)の意向を尊重するのか? ここを整理して理解するだけで、 会話のニュアンスがグッとわかりやすくなるはずです。 前述の "I'll be back." にしても、アンドロイドの殺し屋であるターミネーターが I will を使うことが肝なのです。 つまり、ロボットという設定の彼が "I'll be back." と自らの意志を口にして終わるラストシーン。熱い展開なわけです。

しかし、普通に英語の教育を受ける分には will は未来形という認識になります。 私はずっと昔に読んだ洋物SFで、登場人物がペイシェンス(忍耐)とかウィル(意志)とか…、つまり名前が キャラクターの役割や性格をドストレートに表現しているという本を読んだわけで (今ネットで調べると『第七の封印』 オースン・スコット カード /// みたいです )。 この経験があったからこそ、 will が意志を表すということを頭の片隅において今日まで生きてきたわけです。 未来じゃなくて「意志」なんですよね。 むしろまったく、未来だなんて考え方は、バッドなわけで。

The sun will rise again.
じゃあ、コレはどういうこと? 「太陽はまた昇るだろう(陽はまた昇る)」という内容ですが、 この will は誰の意志なんですか? 主語である太陽の意志? そんなわけないですよね、やっぱり will は未来を表すやんか! 否! この will は 「話し手」の意志よ! つまり、「話し手」は「きっと良くなるさ」というポジティブなイメージを伝えたいという意志を持っている。その意志をくまなくてはならない。 そう、この話し手の概念ってやつは表面上は見えないけれど(特に文章では)、だけど、 想像してほしい。誰かが語らなければ「そもそも言葉が生まれてきやしない」ということを! 古今東西・過去も現在も問わず、世の中に存在する全ての言葉には、 それを発信した「話し手(語り部)」がいる、という厳然たる事実。 あああぁああぁぁぁぁぁ、私たちは恐るべき過失を犯してきていた、今の今まで。 広告から新聞の社説から便所の落書きに至るまで、「誰が筆者であるのか」ということを強く意識して読んできただろうか? これからは、気をつけなければならない。

The sun will never rise.
You will never be successful.
「二度と陽は昇らないだろう」
「おまえは決して成功しないだろう」
当然のことながら否定的なニュアンスを伝える場合もあります。 「おまえは決して成功しないだろう」とは話し手の推察です。 何をもって推察したのか? 知力、体力、根性、誠実さ、勤勉さ、忍耐強さ、視野の広さ、カリスマ性、人脈、資金力、総合力… いろいろ考えられますが、結局は主観的な分析にすぎません。 主観的な分析によって「ダメ」という結論をだし、しかし、それは確定事項ではないから will という箱舟に乗せて「~だろう」として運ぶ。 「おまえは決して成功しないだろう」と言われた場合、 いや、わからないよ、成功するかもしれない。そう、わからない、未来のことなんだから(オレの実力は未知数だし…)。 ただ一つ確実なのは、話し手は you のことを低く評価しているという「意向」だけ。 つまり、成功するかどうかは分からないし、結局確定しているのは you の未来ではなく、 I (話し手)の will (意志)、
You will never be successful.
とは主語は you であるが、この言葉の主役は結局のところ話し手自身である。

結論として、疑問文じゃない普通の文で、will が登場する場合、 主語が何であれ(I / You / He / She / The earth...)、ものすごく個人的な主観を述べているに過ぎない(未来なんかじゃない)。 逆に言えば、英語で話をする場合は、「個人の意志」というものを隠し続けて会話を続けることが非常に困難である。 私の個人的見解としては、どうでもいい日常会話なんてものは、 客観的な真実を正しく伝えることよりも(新聞とか専門書を読めば書いてある!)、 例えデタラメでも個人の主観を盛り込んでフィクションとする(脚色して話す)ことが重要だと思います。 客観的事実よりも主観(will)を重視しなければならない、そういうときって、あるだろう。 …総括として、 will から「意志」のニュアンスを省いて教育してきた日本は、 個人の意志というものを明確に表明しなくてもいい文化なんでしょう…。 カメレオン、玉虫色…。