2015年6月14日日曜日

第72話 砂の城

最初の広告攻勢(3月末~5月頭)、これを仮に第1期と呼ぶなら、 第1期で DL数はおおよそ 40→610 という増え方をした。 第2期では、より的を絞った形で最も効率よく攻めたい。 そう思った。 第1期終了の時点で特筆すべきデータは、アプリをダウンロードした国の偏りである。 4月1日の時点でその国のDLは0だったが、5月1日の時点でその国のDLは160にまで増えた。 広告を配信した国は特に制限は無く、ただ単に言語を英語に絞っただけだった。 それなのにアジアの某国がダウンロードの1/3くらいを単独でかっさらうんだから、これは偏りと言うしかない現象。

その国とはパキスタンであった。 ご存じだろうか? インドの西側に位置し、中東への入り口ともいえる場所に位置する。 人口は日本より多い。 メインの都市として、カラチ、イスラマバードなど。 イスラム教の国だが、中東各国やアメリカとの付き合い方に悩みがち。 インドとは仲が悪い。夏は異常に熱く、国全体的にほこりっぽい。 食糧自給率が高く、人口に占める若者の割合も我が日本とは対照的に高かったりする!!!ので、インフラが整備されれば経済発展も期待できる、か? 今後に期待。 カードのカテゴリでは、アメリカが33.20%、インドが1.75%、パキスタンはたったの0.08%のシェアである。 0.08%ということは例えば10万ダウンロードのアプリの中で、パキスタンの席はたったの80ということである。 ということは、パキスタンに的をしぼって広告を出して短期間で400~500でも獲得しようものなら、パキスタン国内における ランキングで上位に上り詰めることも可能。 ずばり、ゲーム>カードのカテゴリでベスト10も夢ではない? それプラス、前述の異様な偏りである。 他の国と比べて圧倒的にパキスタンが多かったということは、パキスタン人の興味を引きやすい何かがあるということ。 このあたりを加味すると、パキスタンに集中的に広告を出す戦略はなかなか面白い結果を生みそう…そんな予感がした。

第2期は一日の予算を2,000円に設定してキャンペーン期間は6月2日までの10日間とした。短期決戦である。 そして、配信する国は思い切ってパキスタンオンリーとした。 この第2期で400弱のダウンロードが発生し、パキスタンでのダウンロードは 6月2日で552にまで増えた(全体で999DLだからpkが単独過半数)。パキスタン国内でのランキング(ゲーム>カード)はウナギ登りとなり、最高で16位となった。

日本でカード(無料トップ)16位は、「麻雀 天国牌 by Hangame」あたりである。戦闘力100万クラスである。 パキスタンでも16位付近のアプリなんてのは有名どころが多く、パキスタン単独でも毎日20~40人はインストールされている勢いであろう。 16位を維持できるかと言うと、広告を続けている限りは維持できるのだが、やめた途端にメッキが剥がれるかのごとく、急落してしまう。 たった10日ほどで450位までランキングを落としてしまった。厳しい現実である。 これだけを見ると、無料トップのランキングは過去1週間のインストール実績が決定的な要素になっているようだ。 逆に広告に頼らずに自然流入でランキングを上げてきたアプリなんかは、安定感を持って上位ランキングに食い込み続けるだろうし、 仮に落ち目になっても下り方はもっと緩やかなハズ。

資金をつぎ込んで高順位を獲得しても、資金注入をやめたが最後、すぐに順位が元に戻る。 で、あれば、意味ないじゃん。という結論になりそうであるが、 第2期の広告攻勢が終わってから、パキスタン以外の国からの自然流入が多少は確認できる。 プレイストアで検索をかけたときの掲載順位には、単純なダウンロード数も考慮されるはずである。 インストールが1,000を超えたことにより、検索で上位にでやすくなったのでは??? と考えられる。 必ずしも広告を出稿したことが無意味ではなかったと感じる…いや、感じたい。
<終>

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カードのカテゴリではシェアが、アメリカで33.20%、次いで日本が5.43%である。 この辺りの数字はコロコロ変わるし、統計誤差の部分も大きいと思われるので大雑把な数字として捕らえた方がよい。 が、それでも「アメリカが単独トップ」であることに変わりはない。 まさにアメリカを制する者が世界を制するという状況。

このようにそこでシェアを拡大することが大きな意味を持つ国と、そうでもない国とがある。 大きな意味のある国は、最大の影響力「ビッグ・アメリカ」、課金大国「マネー・ジャパン」、東アジアの雄「オンライン・韓国」、 ヨーロッパの中枢「英仏独」、今後の脅威(彼らは広大な国土を持ち、人口は多く、経済はまだ熟していない)「ロシア・インド・ブラジル」。 押さえておきたいのは、上記9カ国+完全別枠の「中華人民共和国」である。

チャイナは金の盾によって Google との絡みを断っている。 中国国内で Android のスマホを手に入れてもプレイストアを訪問することはできないのだ。 だから、金脈としてはすごい存在感を臭わせながらも、通常のやり方ではユーザーを得ることができない。とても特殊な国。 広告やら Google 関係の apk を全てとっぱらって(アナリティクスやゲームサービスも)、 Amazonストアで有料販売というのが、チャイナからカネを得る場合の有効な戦術となろう。 中国国内に乱立する販売ストアとコンタクトを取ることができれば、新たな販路も開拓できるのだろうが、どうにも難しい話に思える。 まあ、中国の話はここではこれ以上、ほじくらない。 大事なのは、アメリカ、日本、韓国、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、インド、ブラジル、これくらいと考えておけばよい。

主要な国はおそらく、広告の単価が高い(これまでの経験から)。 だから、全世界無差別に広告を出稿して「クリック単価の上限を1~2円」の低価格帯にしていると、 東南アジア、中東、アフリカ、東ヨーロッパ(旧共産圏)などで表示されることになる。 そう考えるとパキスタンで顕著にDLがあったのも、それほど不思議なことではない。 言ってみれば、取り込みやすい国々なのだ。 しかし、デメリットも多い。 まずこれらの国では、広告を表示してクリックされたとしても単価が安い。まあ1円あるかないか。 日本だったらワンクリックで10円20円だって可能である。この差は大きい。 第2のデメリットして、影響力の弱さが挙げられるだろう。 これらの国では、ブログでもフェイスブックでも何でもいいが、インターネット上でゲームの話題をあまり拡散してくれない。 「有名な奴の目にとまって、一気に知名度を上げるぜ」という夢を、そもそも見ることができない。 第3のデメリットとして、「ゲーム慣れしていない」ということも挙げられる。 はじめてゲームをする、というくらいにまで考えて設計しないと、何も理解してくれない危うさがある。 第4のデメリットとして、彼らの所有する端末が低スペックであることも挙げられる。 つまり、予想もしないエラーや不具合が発生しやすいのだ。 デメリットばかり書き連ねたが、これらの欠点を補うノウハウを持てば、これからの国をメインターゲットにして 収益を上げることも可能だろう。 第2~4のデメリットに関して言えば、「裏を返せば…ということ」と逆手に取る戦法だって無いわけじゃ無いんだし。

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