2017年6月30日金曜日

クリボーは跳んではならない

もし、クリボーがジャンプするのであれば、 マリオは軽々にジャンプするわけにはいかない。 なぜなら、跳ねたクリボーに空中で接触して やられてしまう可能性があるからだ。 それでも、慎重にタイミングを合わせれば、 空中戦を制し、クリボーを踏みつけることに成功するだろう。

だが、不用意にジャンプすることに意義を見出せないことも事実。

むしろ、実践的な戦術はジャンプしたクリボーの下をダッシュで くぐりぬけることだ。 何も相手が望む空中戦に応じることはない。 まるで格ゲーによくある「下手にジャンプするな」みたいな理論。

だが、こういうゲーム性のマリオに魅力はあるのだろうか?
おろらく…ない。

こちらが一方的にジャンプできることで、空中戦を制する快感を得る。 不用意にジャンプ、気軽にジャンプ、ナニはなくともジャンプ、してくださいだぜ。 この安全とお気楽さと爽快感は、 プレイヤーに対する、いわば接待なのだ。

だが、それを露骨にやりすぎると プレイヤーに接待を感づかれてしまう。 そこで、ハンマーブロスの登場である。 飛び道具を使い、ジャンプしながらの投てきも行う難敵であり、 いつものジャンプで踏みつけることはできない。 しかし、こちらの持つ飛び道具、ファイアボールを使えば容易に抹殺できる。

この手のアクションゲームにおいて プレイヤーキャラと敵キャラはフェアである必要はない。 ストレスを感じずに敵を蹴散らす爽快感をー、与えなければならないからだ。

一方で格闘ゲームはフェアであることがゲーム性の基盤となる。 プレイヤーは登場する格闘家たちを任意に選ぶことができるのだから、敵も味方もあってないようなもの。 そりゃあもちろん、フェアでなくてはならない。 みんな同じように打撃、投げ、ガード、ジャンプができる。 リーチや威力、スピードで個々人の差があるといっても、根本的には同じである。 逆にマリオ的なアクションゲームでは敵とプレイヤーサイドの 隔たりは大きくなくてはならない。

プレイヤーキャラのみ一方的に銃による遠隔攻撃ができる。 そんなゲームデザインもお、面白いかもしれない。 しかし、一方的にプレイヤーキャラを強くするだけでは、 ゲーム性が損なわれる。 そこで、弱くてマヌケな敵どもを脅威にするために、敵に地の利を与えればいい。

穴もクリボーも同じく障害物。 奴ら、穴もクリボーもタッグを組んで襲い掛かってくる仲間なのだ。 穴は倒されることがない無敵キャラながら、プレイヤーを焦らせることはない。 穴を「いつ飛ぶか」はプレイヤー次第じゃあ、ないか。 一方のクリボーはマリオに倒されてしまう移動障害物であるが、 プレイヤーに行動するタイミングを強制する。 まさに静と動の黄金コンビである。 これが、アクションゲームの基本構造・基本要素である。 だから、自動スクロールのオート・ランなら「穴」という「静の障害物」だけで、ゲームが成立する。


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つまり、穴はアクション・ゲームにおける敵の代表格である。 よく「スペランカー」がちょっとした高さから落ちただけで死ぬじゃあ、ないか…。 と、言われるが、
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(穴に落ちたら)どうせみんな死ぬんだから、高さなんかどうでもいいじゃない!

と、いう製作者側の叫びが聞こえますね。 いちいち、転落死に納得できるくらいの高さを用意していたら…、マップを広く作らないといけないし、画面密度もスカスカになる。 容量が大きくなるのを食い止めることだって、できないじゃあ、ないか。 ただ、この省略行為は世間に受け入れられなかったじゃあ、ないか。 世間では何年たっても「スペランカー」の主人公はちょっとした高さから落ちただけでも死ぬじゃあ、ないか…。 と、言われている。

ゲームなんてツッコミどころは万歳である。 だが、何が許容されて、何が許されないのか、というあたりは全くもって予想できないものだろう。 運悪く、スペランカーのアレは許されなかった。 マリオが水中でファイアボールを発射するのはいいみたいだけど…。 硝石のような酸素化合物を用いることによって、水中での燃焼は可能というが(火薬の原理)、そういう設定なのだろうか?

この話は誰にでも書けるっていうものではない。 「穴のないアクションゲーム」を作ろうとした者だけが考えてしまう苦悩である。 なぜ、穴のない設計にしようとしたのか? スマホゲーの場合、誤操作がけっこうな頻度で発生する。 物理ボタンを持たないタッチパネル方式だと、「押したつもりが押していない」「押していないつもりが押している」と、認識される場合がある、かなりの頻度でぇぇぇぇぇぇ! 圧力を認識しているわけではなく、通電の有無で判断しているからだ。 この方式、激しい操作と正確な反応を要求するアクションゲームには不向きである。 だから、誤操作で穴に落ちて死亡、という理不尽だけは避けねばならぬ。 誤操作が発生しても、「満塁ホームラン」級のダメージではなく、「センターのエラーで二塁打」程度の痛手に抑えるべき。 取り返しがつく範囲のダメージに抑えるべきだ。 そう考えると「穴がない方がいい」と、判断するのは当然じゃあないか。

そして、穴のないアクションゲームを作ろとしたときに、 「敵がジャンプしない」だし「道中に穴や障害物がない」だし、だとゲームとして味気なさすぎるのです。 かといって、敵のジャンプを解禁すると、前述したように操作キャラがジャンプをするメリットが失われてしまう。 時代は変わっても、ジャンプはアクションの華である。 そのジャンプを気安く行えないゲームなんてものは、やっぱり味気ないぜ。

と、いうわけで「穴のないアクションゲーム」を作ろうとしたらちょっとした発明が必要だった。 どんな発明かって? もちろん、言えませんよ、今はね。